不動産の所有者が亡くなり相続が発生し、相続登記の手続きを進めようとしていたところ、登記簿上の住所が亡くなった時の住所(最後の住所)と違うということがよくあります。
1.相続登記の前の登記名義人住所変更は不要
不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)には、所有者の住所および氏名が記載されています。この住所は、引っ越しにより住民票の住所が変わっても自動的に書き換えられるものではなく、不動産の所有者が自ら登記申請を行わなければならないのが原則です。2026年(令和8年)4月1日の法律の改正により、不動産の所有者は登記簿上の情報に変更があれば速やかに変更登記をしなければなりませんが、それまでは義務となっていなかったために住所変更登記をせずにそのままお亡くなりになるケースが珍しくありませんが、「相続による所有権移転登記」を申請する際は、登記簿上の住所と被相続人の最後の住所が異なる場合であっても、前提として住所変更登記をせずにそのまま相続登記の申請をすることができます。
しかし、登記簿上記載されている住所が亡くなった時の住所と異なる場合は、本当に亡くなった方と不動産の所有者が同一人物なのかを証明をする必要が生じます。
2.どうして登記記録上の住所の証明が必要なのか
被相続人と相続人との親族関係や相続の開始(被相続人の死亡)などの事実は、戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)によって証明されます。しかし、戸籍謄本等に記載されているのは「本籍」と「氏名」のみであり、住所は記載されていません。
一方、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されているのは、所有者の「住所」と「氏名」です。
本籍と住所とは異なる場合が多いため、戸籍謄本に記載されている人と登記事項証明書に記載されている人が同一人であるかどうかは戸籍謄本だけでは判断できません。そのため、相続登記を申請する際には本籍が記載された住民票(または戸籍の附票)を提出することにより、本籍と住所を結びつけて同一人であることを証明する必要があります。
さらに、登記記録上の住所と被相続人の最後の住所が異なる場合には、登記記録上の所有者と被相続人が同一人であることを確認するための書類が必要となります。
なお、被相続人の登記記録上の住所と、相続を証する情報として提出された戸籍謄本等に記載された本籍が同一である場合には、それだけで被相続人の同一性が確認できるものとされているため登記実務上は、被相続人の最後の住所を証する書類の提出は不要とされています。
3.被相続人の住所が変わっている場合の必要書類
①亡くなった方の登記記録上の住所と戸籍謄本等に記載された本籍が同一である場合
その戸籍謄本
※なお、この本籍は被相続人の「最後の本籍」である必要はなく、過去の一時期にあった本籍であっても差し支えありません。
②亡くなった方の被相続人の登記記録上の住所と戸籍謄本等に記載された本籍が異なる場合
亡くなった方の被相続人の登記記録上の住所と戸籍謄本等に記載された本籍が異なる場合には、本籍および登記記録上の住所が記載された住民票(除票)または戸籍の附票等が必要となります。
具体的には、住民票除票に記載された住所が登記記録上の住所と一致する場合には、それだけで足ります。登記記録上の住所がさらに以前のものである場合には、戸籍(除籍・改製原戸籍)の附票などを取得する必要があります。
③登記記録上の住所が記載された住民票除票や戸籍の附票等を取得できない場合
役所の保管期間を過ぎていて登記記録上の住所が記載された住民票除票や戸籍の附票等を取得できない場合があります。その場合は登記簿に記載されている住所に、同姓同名の別人がいるかもしれないという推測を否定する材料として、原則として登記簿上記載された住所を管轄する役所に「不在籍証明書」および「不在住証明書」の発行をしてもらいます。
※役所によってはそもそも不在籍証明書、不在住証明書の発行をしない自治体もあります。
また、併せて亡くなった方の所有権の権利証(登記識別情報通知)原本を提出し手続きを進めます。
もし権利証を紛失している場合は、相続人全員から「不動産の登記名義人は被相続人と同一人物で間違いありません」という内容の「上申書」を提出することで同一性を証明して、相続登記を進めてもらうことができます。書類の形式としては上申書として作成しても良いですし、遺産分割協議書があればその中に上記のような意味合いの文言を入れることでも足ります。