遺言書の「付言事項」とはなんですか?

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遺言で書けること

遺言の本文には法定された「遺言事項」しか記載することができませんが、なぜそのような内容の遺言書にしたのか等を記載しておくことで相続発生後に相続人がその記載を読み、遺言者の心情を理解して、相続人間で争うことを避けるために「付言事項(ふげんじこう)」というものを書き残すことができます。
付言事項には法的拘束力はありません。しかし、故人の肉声としての想いは「争ってでも遺産を奪い返してやる」という相続人の怒りの感情を下ろさせる力があります。

遺留分侵害額請求への発展

遺言を作成する理由で多いのは、死後、家族が相続財産で争わないために作成することだと思います。しかし遺言の内容によっては骨肉の争いに発展することがあります。例えば「特定の相続人(例:介護をしてくれた長男、長年連れ添った妻など)に全財産を譲りたい」という内容の遺言を残すと、他の相続人の「遺留分(相続人に最低限保障された遺産取得分)」を侵害することになるため、何も説明がなければ財産をもらえなかった相続人は「親父は兄貴だけ贔屓して自分をないがしろにしている」 「長男が無理やり書かせたに違いない!」など、マイナスの感情が湧き出ることもあるかと思います。これが感情的な対立の火種となり「遺留分侵害額請求」へと発展します。

付言事項の有無により起こり得た2つの未来

  • 被相続人: 父(母は既に他界)
  • 相続人: 長男 一郎(同居・介護10年)、次男 二郎(遠方で別居・疎遠)
  • 財産: 自宅不動産(3000万円)と預金(500万円)
  • 遺言内容: 「長男に全財産を相続させる」

付言事項がなかった場合

次男は遺言書を見て「兄貴だけズルい」「俺の権利(遺留分875万円)を現金でよこせ」と請求。
長男には遺留分侵害額を現金で支払うほどの蓄えがないため、結果として実家を売却して現金を捻出して支払い、兄弟の縁も完全に切れました。

付言事項があった場合

【付言事項】 私の人生は、妻と二人の子に恵まれた素晴らしいものでした。10年間もの間、同居して私の介護に献身的に尽くしてくれた一郎には心から感謝している。その感謝の気持ちとして私の遺産は一郎に残したい。二郎は大学を出て、立派な職業について家庭も持っていることを誇りに思っている。 どうか、遺留分を巡って兄弟で争うようなことはせず、長男がこの家で安心して暮らせるようにしてやってほしい。これからも兄弟仲良く助け合って生きていってほしい。
結果: これを読んだ次男は「親父は自分のことを認めてくれていた」「兄貴は苦労していたんだな」と理解し、「親父の頼みなら仕方ない」と遺留分の請求をすることなく実家は守られ、兄弟関係も維持されました。

「付言事項」作成のポイント

上記は例の一つであり付言事項があったからと言って必ず争いを回避できるとは限りません。
しかし、遺言者の想いが記載されていることで残された相続人の感情が変わる可能性は大いにあります。ただし、どのような内容の付言事項であるかにもよりますので以下を参考にしてみてください。

感謝と愛情を伝える

財産を渡さない相手に対しても、「愛していないからではない」ことを明確にします。「自立しているお前を誇りに思う」など、認めていることを言葉に残して承認欲求を満たす言葉を選びます。単純な財産の分け方だけではなく「想い」を付け加えるだけで残された相続人から理解や共感を得られやすくなります。

具体的な理由(背景)を説明する

「なぜこの配分なのか」を客観的事実(介護の苦労、生前贈与の有無、事業承継の必要性など)に基づいて説明します。

「争わないでほしい」と願う

親としての切実な願いとして、「兄弟仲良くしてほしい」「母さんを困らせないでほしい」とメッセージを残します。ただし、遺留分は法律上最低限残される権利であるため、付言事項に「遺留分の請求をしないように。」と書いていたとしても、相続人はそれに拘束されません。しかし、遺言者の気持ちが伝われば、遺留分の請求をしないかもしれませんので、付言事項に書いておく意味は大きいと思います。

「遺留分」という言葉自体を知らない人も沢山いますし、遺留分には時効がありますので、もしかしたら時効成立まで他の相続人が遺留分請求をして来ないこともありえます。しかし、付言事項に「遺留分」という言葉が入ることで、自らに遺留分の権利があることを知り、結果として付言事項が遺留分請求のキッカケとなる可能性もありえます。

付言事項の中で遺留分について言及することが必ずしも良い結果を生むとは限りませんので注意が必要です。

否定的な内容は書かない

一定の親族を否定するような言葉は避けるべきです。その付言事項を読んで逆上した相続人が、怒って裁判沙汰にしてくることも考えられますし、遺言書を無理やり書かせたのではないかという余計な疑いを持つ可能性もあります。

争いのない相続のために

付言事項は「法的効力のないただのメッセージ」ですが、遺言書は法律文書であると同時に、家族への最期のラブレターでもあります。しかし万能ではないため、上記の内容を書き記した遺言であったとしても、残念ながら争いが起きてしまう場合もあります。
できれば生前に家族で話し合い「こういう内容の遺言を書こうと思う」など、遺言書作成者本人と家族との生前からの意思の疎通、コミュニケーションがとても大事です。

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