Q&A
遺言書にはどんなことを書いても大丈夫でしょうか?
遺言に書けることは法律で決められています。(「遺言事項」といいます。)
もちろんそれ以外のことも書くことは可能ですが、遺言事項ではないことには法的な拘束力はありません。
例えば「毎月命日に自分の好物を仏壇に供えること」などは書いてあっても法的な拘束力は持たないため相続人に強制することはできません。
遺言事項ではありませんが、なぜそのような内容の遺言書にしたのか等を記載しておくことで、相続発生後に相続人がその記載を読み、遺言者の心情を理解して、相続人間で争うことを避けるために「付言事項(ふげんじこう)」という形で書き残すことができます。
遺言事項とはなんですか?
遺産を誰に残すか、どのように分けるかに関する事項が中心となります。
- 相続人の廃除、その取消し
例えば、遺言者に対する虐待や著しい非行があったため、「遺言者は、子Bを推定相続人から廃除する」など、遺言をもって推定相続人を廃除することです。 - 相続分の指定、指定の委託
例えば、「妻Aの相続分を3分の1、子Bの相続分を3分の2とする」など、法定相続分と異なる割合で相続分を指定することです。 - 特別受益の持戻し免除(※1)
本来であれば、遺産総額に持ち戻して計上すべき生前贈与による特別受益の持ち戻し計算をしなくてもよいと免除することです。 - 遺産分割方法の指定、指定の委託、遺産分割の禁止
例えば、「不動産は妻Aが取得し、預貯金・株式は子Bが取得すること」など、分割方法を具体的に定めることです。 - 遺贈による遺留分侵害額の負担割合の指定
例えば、受遺者が複数人いた場合に「受遺者Zにのみ遺留分侵害額を負担させる」など目的の価額の割合以外の指定をすることです。 - 相続人の担保責任の指定
各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負うと規定されています(民法911条)が、被相続人は遺言によって、この相続人の担保責任を指定(変更)することができます。 - 遺贈
例えば、「自動車を友人Zに遺贈する」など、相続人以外の者に対し、遺言をもって財産を取得させることです。 - 一般財団法人の設立
死後に地方自治体などに寄付をするのではなく、一般財団法人を設立する方法があります。 - 信託の設定
例えば、認知症の配偶者のために子に財産管理を任せる、障害者の親亡き後の問題に備えるといった活用方法が考えられます。 - 生命保険の受取人の変更
遺言をもって生命保険金の受取人を変更したりまたは指定したりすることです。 - 子の認知
例えば、「遺言者とA(母親)との間に生まれた下記の子を自分の子として認知する」など、遺言をもって子を認知することです。 - 未成年後見人・未成年後見監督人の指定
親権者が亡くなった場合などに未成年者に親権を行使できる者がいなくなってしまった際、代わりに未成年者の財産管理や監護教育を責任を持って適切に行なう役目を負う者を指定することです。 - 遺言執行者の指定、指定の委託
例えば、「この遺言の遺言執行者として妻Aを指定する」、「遺言者は、遺言執行者に対して次の権限を授与する。(1)不動産、預貯金、株式その他の相続財産の名義変更、解約および払い戻し(2)本遺言の執行に必要な場合に代理人および補助者を選任すること」など遺言執行者を指定し、執行権限を授与することです。 - 祭祀主宰者の指定
お墓などの祭祀承継者を指定することです。
(※1)婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他方に対し、居住用不動産(建物またはその敷地)を贈与・遺贈(遺言による財産の無償譲与)した場合、遺産分割においてそれを特別受益として扱わない旨の意思表示をしたものと推定されます。
法定遺言事項は必ず遺言でしなければならないのですか?
生前のうちに行うのであれば、もちろん遺言でなくても構いません。
例えば生前に贈与契約を締結して贈与してもよいですし、亡くなった後に贈与したいのであれば遺言で遺贈でも構いません。
相続人の廃除・特別受益の持戻し免除・祭祀主宰者の指定・一般財団法人の設立・信託の設定・生命保険の受取人の変更・子の認知も生前に行うことが可能ですが、その他の事項は生前に行うことはできず、遺言でしなければなりません。
生前に行うことができる事項も、死後に行うのであれば遺言の形式をとる必要があります。
法定遺言事項を記載した遺言を残せばその通りになりますか?
残念ながら必ず望んだとおりになるとは言い切れません。
なぜなら、相続人全員で合意できる場合は遺言とは異なる遺産の分け方をすることも可能だからです。
(ただし、相続人以外の第三者への遺贈がある場合は、その第三者を無視して遺産を分けると訴訟に発展する可能性もあります。)
また、受け取る側にも拒否する権利がありますので、相続も遺贈も放棄することができます。同様に、遺言執行者に指定された人も、就任を拒否することができます。
ご本人の自由の意思の元に遺言は作成できますが、相続人や受遺者が財産を受け取る意思があるのか、遺言執行者に就任してもらえるのかなどは、遺言作成時にあらかじめご家族で話し合いされ確認しておくことが望ましいと言えます。
ただし、話し合いができないご事情がある場合でも決して遺言を残す意味がないという訳ではありません。
子供がいないご夫婦の場合は、妻とご本人の両親(なくなっている場合は兄弟姉妹)が相続人となるため、将来、遺産分割協議が難航する可能性もあります。配偶者に余計な気苦労をさせないためにも「全財産を妻に相続させる」旨の遺言を作成する意味は十分あります。